内定者フォローの目的と重要性
新卒目線でNGポイントも紹介
新卒採用の早期化に加え、少子高齢化に伴う企業間の人材獲得競争が激化する現代において、採用担当者様が直面する課題は複雑化しています。
本記事では、優秀な人材を確実に確保するための内定者フォローの重要性と具体的な方法を詳しく解説します。
内定者フォローとは?
内定者フォローとは、企業が採用活動で内々定や内定を出した学生に対して、入社までの期間に実施する一連のサポート活動を指します。
近年は新卒採用の早期化が進み、内々定から入社までの期間が長くなる傾向にあります。
内々定を得た学生も、自身にとって最適な企業を求めて就職活動を継続することが多いため、内定者フォローを通じて入社への不安を解消し、モチベーション維持を図ることで優秀な学生の辞退を防ぐことが極めて重要となります。
なぜ今、内定者フォローが重要なのか?
直近の大卒求人倍率調査※1によると、2026年卒の求人倍率は1.66倍。学生優位の「売り手市場」が続いています。
また、2025年卒では全業種で初任給引き上げの動きが拡大しており、企業間の人材獲得競争が激化しました。
さらに、2021年の就職活動ルール廃止以降、就職活動は早期化の一途をたどっており、複数の企業から内定を得る学生の割合が増加しています。
※1参考:大卒求人倍率調査(2026年卒)|調査|リクルートワークス研究所
コストと手間をかけて採用した学生が辞退してしまうと、これまでの採用活動は全て無駄になりかねません。
だからこそ、企業は単に内定を出すだけでなく、学生に「最終的にこの会社に入社したい」と思わせる積極的な内定者フォローが不可欠です。
内定者フォローを実施することで、企業は優秀な人材を確実に確保できるだけでなく、入社後のミスマッチを防ぎ、早期離職といった問題への対策も可能になります。
新卒が内定者フォローを望む理由
内々定や内定をもらった学生が入社までに感じる心境についての調査※2では、入社予定企業への迷いや不安について、7割ほどの学生が「ない」と回答。
ですが、一方では残りの3割が迷いや不安を感じています。
その中でも学生全体の約1割強にあたる学生が「活躍できる自信がない」と回答しており、学生から社会人になるという立場の変化に不安を感じていることがうかがえます。
※2参考:調査データで⾒る「入社に向けた内定者フォロー」-2024年卒調査-
これに対して内定者フォローを行うことで、不安や迷いを払拭してあげることで内定承諾につながります。
特に内定者フォローに望む項目として以下の点が挙げられます。
そんな中で、新卒が入社までに望む項目として以下の点が挙げられます。
入社前に同期となる他の内定者とのつながりを求める声が多く、入社後の人間関係への不安を解消したいと考えています。
入社後の具体的な働き方、職場の雰囲気、部署ごとの業務内容など、より詳細な情報を求めることで、入社後のギャップを減らしたいと考えています。
入社までに身につけておくべきスキルや知識について、企業からの具体的なアドバイスや学習機会の提供を期待しています。
新卒が内定者フォローを希望する背景には、「本当に歓迎されているのか」という不安や、「社会人として何を準備すればよいかわからない」という焦燥感があります。
特に、会社や仕事に対する「ブラックボックス」感(例:求人情報だけでは分からないリアルな情報、寮の設備、入社準備の具体的な段取りなど)や、社会人としての基礎的なスキル・知識への不安が強く、企業からの情報提供や学習機会を求めているのです。
内定を得た企業に就職するかどうかを決めるにあたって、内定者フォローの内容や情報がどのように影響するのかについて調査したデータ※3によると、実際の仕事内容や働き方の実態などを確認したり、社風を確かめたいという考えがうかがえます。

※3参考:キャリタス就活 学生モニター2026 調査結果(2025年5月発行)
志望度があがった!内定者フォローの内容
内定後のフォローによって志望度や入社意欲に変化があったかどうかを調査したデータ※4では、「志望度が上がったことがある」が4割を超えており、内定後のフォローが入社意欲を高めるのに効果をもたらしていることがわかります。
内定者から特に好評なのは、一人ひとりに寄り添った丁寧なコミュニケーションです。内定通知後の電話や、最終面接を担当した役員からの具体的なフィードバックは、「大切にされている」という実感につながり、企業への信頼感を深めます。
また、他社と迷っている際に社員面談の機会を設けたり、承諾期限を柔軟に対応したりする姿勢は、「強く必要とされている」という実感を与え、志望度を大きく引き上げます。
複数の社員が参加する面談やOBとの交流や懇親会では、社員が本音で具体的な情報の開示とリアルな体験も重要です。年次の近い先輩社員との交流で給与や休暇といった聞きづらいこともざっくばらんに質問できる環境や、事業・職種の配属確約は、入社後の不安を解消し、安心感を与えます。
単なる情報提供に留まらず、内定者一人ひとりに寄り添った丁寧なコミュニケーションと、入社後のリアルな姿を想像できるような機会を提供することが、志望度と入社意欲を高める鍵となることがわかります。

やってはいけない!NGフォローの例
一方で「志望度が下がったことがある」ケースもわずかながら⾒られました。適切な頻度や内容でのフォローが重要になってきます。
内定者の志望度を下げ、不快感を与えてしまう主な要因は、学生への配慮を欠いた一方的なコミュニケーション、不誠実な対応や約束不履行、そして信頼を損なう不透明・不正確な情報提供の3点に集約されます。
具体的には、早い時期からの承諾を迫る過度な連絡や、他社の選考を妨げるような課題・宿題の提示は、学生にとって大きな負担となります。
また、多忙な時期にもかかわらずイベント参加を促したり、交通費を伴う来社を頻繁に求めたりするなど、学生の状況を無視した連絡は不満につながります。
ほかにも、承諾期限の延長相談時に態度が悪くなる、面談の約束を反故にする、給与に関する質問を濁すといった行為は、学生に不信感を抱かせます。
他社を不当に貶める発言や、期待外れな交流会、情報提供が全くないといったフォロー不足も、学生の志望度を著しく低下させる要因となります。
内定者フォローにおいては、学生の状況や意思を尊重した配慮、誠実で透明性のある情報提供、そして一貫したサポートを心がけることが、NGフォローを避け、良好な関係を築く鍵となります。

結局、内定者フォローって何をしたらいいの?
内定者が志望度を高め、安心して入社を迎えられるよう、効果的なフォローの内容を4つのポイントにまとめました。
新卒が望むフォローの内容として、「内定式」を筆頭に対面形式のイベント実施を求める回答が大多数を占めているので、オンライン・オフライン双方の施策を組み合わせることが重要です。
内定者は、企業からの連絡が途絶えると不安を増幅させやすいものです。入社までのスケジュール、入社後のスケジュール、研修内容の予定、入社準備の段取りなど、月に1回程度の定期的な連絡を心がけましょう。
こうした継続的なコミュニケーションによって、内定者は自分が会社の一員であると実感でき、安心感を得られます。これにより、入社への意欲を保つことにもつながります。
人事ブログや先輩ブログを配信して会社の様子や社員の働き方を発信したり、わかる範囲で事前にスケジュールを共有して不安を解消したりするのも効果的です。
電話やメール、チャットツールなどを活用し、会社の最新情報や入社準備に関する案内を適度な頻度で共有することも大切です。
入社前に同期となる他の内定者とのつながりは、入社後の人間関係への不安を解消する上で不可欠です。
コロナ禍以降、選考のWeb化で内定者同士の接点が減少しているため、意図的な交流機会の創出はさらに重要になっています。
内定者専用サイトやSNSのプロフィール機能でお互いの顔や趣味などを共有し合い、会話のきっかけを作りやすくしたり、人事担当者が途中で退出し内定者だけで話す時間を設ける懇親会などを開催したりすると良いでしょう。
チャットツールやSNSグループを活用した内定者専用のコミュニティで、日常的な情報交換やコミュニケーションを促し、帰属意識を高めることも有効です。
また、チームワークを醸成するワークや研修を実施し、一体感を高めることもできます。
内定者が知りたいのは、入社後にどのように働くかという具体的なイメージです。同期との交流だけでは得られない「現場の声」や「リアルな情報」を提供することが、根本的な不安解消につながります。
人事担当者や入社2、3年目の先輩社員との個別面談や少人数での座談会といった社員との交流機会・面談は、内定者の疑問や不安を解消し、企業への理解を深める貴重な機会となります。
また、入社前に職場の雰囲気や実際の業務環境を知るための社内見学会・施設見学は、入社後のギャップを減らす上で有効で、特に理系学生からは具体的な働く現場を見られる機会へのニーズが高い傾向にあります。
社内行事や部署の懇親会などに内定者を招待することで、企業の雰囲気や文化を肌で感じてもらい、入社後のイメージを具体化することも可能です。
入社後の活躍を想像した際、多くの学生は「何をしたら仕事ができるようになるのか」と不安を感じています。企業がスキルアップを支援することで、内定者は強いロイヤルティーを感じ、入社後の貢献意欲を高めることができます。
入社前に基礎的なビジネススキルや業界知識を習得できるeラーニングや、入社後に役立つ課題を提供することで、内定者のスキルアップを支援し、入社後のスタートダッシュをサポートしましょう。特に「ビジネスマナー」や「基本的なPCスキル(Excel・Word・PowerPoint)」は、多くの内定者が望む学習内容です。
学生生活の妨げにならない程度の内定者研修として、基本的なビジネスマナーなどを学ぶ機会を設けることも有効です。
まとめ
学生優位の「売り手市場」では、内定辞退を防ぐための内定者フォローが極めて重要です。内定者は、入社への不安を抱えながらも「同期とのつながり」「リアルな会社の情報」「入社前のスキル・知識習得」といった多岐にわたるサポートを企業に期待しています。
定期的な連絡と丁寧なコミュニケーションやオープンな情報提供と社員との交流機会を通じて入社後のイメージを具体化し、働く準備への支援で彼らのロイヤルティーを高めることが鍵となります。
内定者フォローは、単なる採用活動の延長ではなく、優秀な人材の確保と定着を実現するための重要な投資です。
企業と内定者の双方にとって実り多い関係を築き、採用成功へと繋げていきましょう。