内定者フォロー内容を決めるときの参考書
「内定者フォローの達人 ノウハウ編」
はじめに
「フォローツールを導入したけれど 何をすればよいかわからない」という問題を抱えている人事担当者様も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは内定者フォロー内容を決める上での押さえるべきポイントをまとめています。
まだ内定者フォローツールを導入されていない方はトップページよりご検討ください。
まずは内定者を知ること
内定者フォロー内容を決めるにも、まず今の内定者を知ることから始まります。
内定者をとりまく環境はどんなものか?どんな不安を抱えているのか?など、分析することにより、内定辞退を防ぎ、不安を解消するフォローが導き出されます。
内定者フォローの達人は、順を追ってフォロー内容を検討、構築していく構成になっており、人事担当者様がこれを読みながら実際のフォロー業務を行っていくイメージで作成しております。

内定者パックはフォロー活動を行う上での一つのツールとして位置付けており、内定者パックをご利用頂いている、いないに関わらずお役に立てる参考書をイメージして構成しておりますのでどの企業様でもお使い頂ける内容になっております。
まずは序章から5章まで順番に読み進めて下さい。現状の理解、考え方・やり方を学習して頂いた上で、まとめの6章があり最後にワークとして「内定者フォローマトリックス」(ワークは合計3つあります)に御社のフォロー施策をまとめて頂く事で、御社の内定者フォロー計画&実施の設計図が手に入るようになっています。
なお、「ノウハウ編」の各章では弊社商品の話は出てまいりません。
導入を検討いただける企業様には、内定者パックを活用しながらより良いフォロー活動を行う参考書「実践編」を配布しております。
「実践編」は、具体的な内定者フォローを行う上での参考例、見本例となっています。
特に内定者パックを使いながらどうすれば良いかの参考書としてはこれ以上ないものになっておりますので、内定者パックを内定者との連絡用にしか主にお使いではなかった企業様も今まで以上に利用・活用できるようになるはずです。
また参考資料として、内々定出し~入社までの間に起きる様々な問題実例などをコラムとしてまとめておりますので、こちらもぜひご参考下さい。
最後になりますが、私どもプロシーズも、内定者パック及びこの本を通じて、一人でも多くの学生が例年以上に希望に燃えて就業をスタート出来ること、さらには各社様に将来大いに貢献していけるような人材確保、そして育成のお役に立てるようにこの業務に全力で取り組んでおります。本書が未来の御社を支える人材確保、及び人材育成の一助になれば幸いでございます。
内定者フォローの達人プロジェクト
担当取締役 江本亮
序章
近年における内々定、そして承諾局面の実態について
~学生は内々定を獲得した後、どう考え、どのように動くのか?~
まず内々定を受け取った時の学生の状況、及び心理状態、さらには学生に周囲からどのようなアドバイスが入っているかをご存知でしょうか?
そのあたりをこの章では詳細に解説したいと思います。
まず多くの企業では内定承諾書の提出、及び「うちが内定を出したら他社の選考を辞退しますか?」と内々定を出す際に学生にプレッシャーをかけていることかと思います。これに対して、学生サイドではどのような理解及び対策が取られているでしょうか?
まず学生は各種就活掲示板・SNSで情報収集をしています。さらには学校のキャリアカウンセラー、及び職員へ相談をしています。
どちらにしても、「内定承諾書及びその約束に対する法的拘束力はない、だから他社と迷っていても「はい」と返事をして構わない、ただ礼節は大事にするように。」というアドバイスを学生は受けています。
よって学生に内定承諾を迫ったときに「はい、御社に入社します。」という返事があったとしても、それは本当の意味での拘束力はない、と彼らは理解した上で返事をしている、と考えるほうが無難なのです。

しかしここで誤解がないようにお伝えしますと、「それでは内々定を取るだけとって断る学生がいっぱいいるのではないか?」と思ってしまいますが、実はそれほど「内々定を取りまくり辞退しまくる」学生も存在しておりません。
やはり内定承諾をしておきながら就職活動を継続し他社と接触をしていくという行為は、彼らにとっても非常に気持ちが悪いことであり、平然とそれができる学生というのは今の時代でもやはり稀なのです。
ちなみに弊社で行っていた就職予備校事業の中でも学生から評価が高いサービスの一つが実はこの「内々定承諾局面の対処法・企業選定アドバイス・メンタルフォローサービス」でした。
真面目な学生たちは真剣に悩んで最後に内定承諾企業を決定しています。そしてそれはだいたい2社からどちらかを選ぼうとする相談が一番多くなっています。
そういった状況の中で、企業側の行うべき対応を以下の通りまとめてみました。
企業側の対応
- 内々定承諾時に「他社は断れますか?」というプレッシャーはやはりかけたほうが良い
(ある程度の効果はあるということです) - 但し内定承諾書をもらったところで安心できるものではない
- 学生の就活行動量は夏休みに入るまでの期間はあまり落ちない、と考えておくべきである
これが今年度における内定承諾局面の正しい理解です。
次に最終選択の場面です。彼らはその2社からどうやって入社先を選択するのでしょうか?(10月1日までにどちらに断りを入れるのでしょうか?)学生にヒアリングをしたところ最も多かった回答は、
「自分の「フィーリング」「直感」を大切にし、アドバイスも参考にしている。」
当たり前ではありますが、やはりこのような決定のプロセスが現実的に起きます。
ところで、このアドバイス・相談についてですが、就活支援事業の中で調査してみたところ「就職活動の相談相手」に関しては、第一位はなんと「友達」で、次が「親」です。その次が「学校の就職課」そして「先輩」というのが相談相手の順位付けの調査結果でありました。(ちなみに中には内々定先の人事担当者、という回答もありました。)
ここでわかるのは、内定者が最終的に承諾・辞退を決める時には、これはどちらかと言うと的確なアドバイスに基づいて決定しているわけではなく、ほとんどは自分で情報を集め、悩み、そして返答期限までに判断をする為に友達や親に意見を求め、「有名だしなんとなくこっちにしたら?」というアドバイスにも揺れながら最終決定をしているわけです。

では、はたして「フィーリング」とは何を指しているのでしょうか?
フィーリングと言われていますが、適当に、ということではなく何かに基づいて判断をしているはずです。決して私どもが調査してきた学生は「ま、いっか。」という風に、適当に決定しておりませんでした。よって私どもはここにまず着目をし、この「フィーリング」が何に対するどんな感じを指しているのか?を明確化し、そこに求めているものを提供していく、これが内定者フォローである、と結論づけました。
次の1章はまずこの「フィーリング」の実態を明確にしていきます。
第1章
内定者における「就職先の4つの判断軸」の理解
~自分の就職先の決定に至る判断軸は4つある!~
「最終的にどうやって選べばいいのだろうか?」ここは学生の立場にたって考えてみましょう。複数の内々定先から最終的に1社に選択をする、これはどうしたらできるでしょうか?
学生は内々定先を自分の判断軸に照らし合わせて、自分のそもそも望んだ就職先だったのか?という確認作業をしていきます。
自分の考えていた「就職の軸」に対して、入社を決めようとしている会社がマッチしているかどうかの確認作業を行っているわけですが、そもそも学生は内々定に到るまでの過程ではどうだったのでしょうか?
数千社の企業から御社(及びもう一社)にたどり着く過程においては「自己分析」「適性テスト」「適職診断」等によりまず自己分析し、企業を研究し、エントリーをして説明会に出席してさらに研究を重ねていく、少なくともフィーリングだけで入社希望企業を選んでおらず、そしてフィーリングだけで内々定はでないのが常識となっています。

学生はそこまでの積み重ねの上で内々定までたどり着いている、そう考えますと、学生は最終的な承諾決定時においても、フィーリングよりもっと明確な「軸」をもって判断をしているはず、そう考える方が自然です。
それはどのような「軸」なのでしょうか?最終入社を決めるための判断軸のことを「就職先の4つの判断軸」と読んでおります。具体的には次のような4つに分類されます。

就職先の4つの判断軸
- A: 自分という軸
- B: 会社・先輩という軸
- C: 仕事内容という軸
- D: 同期という軸
内々定獲得以降この4つの軸を中心に考え、時には研究し、また意見を聞いたりしながら、最終的に複数の企業から1社を自分で選択をするわけです。それではこの4つの軸の中身はどのようなものがあるでしょうか?一つ一つ解説していきたいと思います。
自分という軸
就職活動を通して熟成させてきた働く上での価値観、
自分の大切にしている考え方
「自分の大切にしている考え方、自分のやりたい事はなんだろう?」
「自分らしい働き方はなんだろう?」
こういったことを明らかにさせておく必要があり、また内々定以前に聞いていた自己分析をもう一度内々定後に明確にさせておくことが必要となります。
フォロー業務を設計する上で最も大切なことは「まず相手を理解して打ち手をうつこと」ですので、この軸の理解でフォロー内容は変わってきます。
会社・先輩という軸
会社の社風・理念・ビジョンが自分にあっているかどうかの判断軸
「自分が選んだ会社は間違っていないか?」
「どんな強みがあるのだろう?」
「この会社はこの先どんなことを目指しているのだろうか?」
これに対する答え=会社理解をさせる必要があります。
会社説明会で実際に発信している会社情報を、再度フォロー時に使用することで、さらに自社に対する理解を深めさせることも効果的です。また先輩社員が自分のイメージしている社会人像と近いかどうかも主にこの軸に入ってきます。
仕事という軸
職種・仕事内容というものが自分にあうかどうかの判断軸
「入社してから実際に取り組む仕事は、具体的にどんなものだろう?」
「自分はその仕事をやっていけるのだろうか?」
「楽しく仕事に取り組めるだろうか?」
これに対する答え=仕事理解をさせる必要があります。できるだけリアルに、かつ具体的に仕事の難しさ、そして楽しさを伝えることが大切です。
同期という軸
仲間としてやっていく上での判断軸
「自分」「会社・先輩」「仕事」「同期」の4つの軸の中でも最も分かりやすく、影響度が大きく出やすい軸と言えます。良きにせよ悪しきにせよ、かなり大きく影響されます。
「一緒にうまくやっていけるのか?」などといった不安を解消させ、この同期達と一緒にやっていきたい、やってみたい!と早い段階でむしろ期待に変化させることができるかがポイントです。
ただ単にイベントで「交流」させるだけではなく「素晴らしい仲間だ」と思わせる工夫が必要です。

以上、4つある軸をご紹介しました。この軸をまず理解することが重要です。それぞれを見ると当たり前のことに感じられるかもしれませんが、果たして昨年度までの御社のフォロー活動はこの学生の判断軸を意識した内容になっていましたでしょうか?
「4つの軸」それぞれの重要度は学生一人一人によって違います。そこで巻末付録Ⅰとして「内々定後に実施する自己分析シート」というものをご用意しています。内定承諾書提出の面談時等に30分程度、学生と話をしながら記入させていくイメージでお使い下さい。もちろん学生にこの巻末付録Ⅰを送付して記入してもらい、返信させて判断していくのも問題ありません。
本年度のフォロー活動のまず第一歩として「内々定学生の価値観、求めているものを知る」この4つの軸のヒアリングからスタートしてみてはいかがでしょうか?
さてこの軸の内容を理解した上で、次のステップは学生が考えている「4つの判断軸」に対して御社は下記を決定し実施していくことになります。
What? 何を伝えていけばいいのか?
Who? 誰が伝えていけばいいのか?
How? どうやって伝えていけばいいのか?
When? いつ伝えていけばいいのか?
次の章は「What?何を伝えていくのか?」です。内定者が内定承諾を決断するのに求めている「5つのソウ」に関してご説明致します。
1章のまとめ
学生が就職先を決める時、「4つの判断軸」がある
-
A:
自分という軸
就職活動を通して熟成させてきた働く上での価値観、自分の大切にしている考え方
-
B:
会社・先輩という軸
会社の社風・理念・ビジョンが自分にあっているかどうかの判断軸
-
C:
仕事内容という軸
職種・仕事内容というものが自分にあうかどうかの判断軸
-
D:
同期という軸
仲間としてやっていく上での判断軸

学生が持つこの「4つの判断軸」の内容を理解し、
What, Who, How, Whenを決定してフォローしなければならない
第2章
What? 内定者が求めている「5つのソウ」
~必ず伝えなければいけないとても大切なメッセージ~
自己・会社・仕事・同期、この「4つの判断軸」に対していったい何を打ち出していけばいいのか?それは下記の「5つのソウ」(ソウとは要素・期待値を表す特徴的な表現として本書では使用していきます)になります。
- A:成長ができソウ
- B:大切にしてくれソウ
- C:しっかりしてソウ
- D:思い描いた社会人になれソウ
- E:同期たちとうまくいきソウ
いかがでしょうか?
この「5つのソウ」が内定者にうまく伝われば御社への入社に近づくはずです。
全ての語尾を「ソウ」にしていることからわかるように、~っぽいな~、そうだよな~、というふうに理論的に伝えるのが難しいことでも感覚的に内定者が理解してくれることが大切です。
内定者は説明会や選考時より、内々定局面にはより現実を見て最終判断をしてくるわけですが、それでも実際に働いているわけではなく、ある意味中途半端な立場の中で思い描いている御社に対する様々な期待値、それが「ソウ」を聞くことにより「納得」に変わっていくはずです。
そして内定者一人一人にとって、このA~Eそれぞれの重要度は違ってきますが、会社としてはこの「5つのソウ」をいかに内定者に感じてもらえるか、伝えていけるか、ということが内定者フォロー業務になります。
それではこの「5つのソウ」として伝えるべき具体的な内容にはどういったものがあるのでしょうか。
成長ができソウ
自分が入社をしたら、自分は成長できるのだろうか? そしてそもそも会社も成長していっているのだろうか?という不安・疑問への返答、期待を用意する。
例
- 会社の成長ストーリー
- 事業の成長ストーリー
- 社員の成長ストーリー
- 成長につながりそうな内定者研修メニューの紹介
- 入社後の研修内容の紹介
大切にしてくれソウ
自分が入社したら大切にしてくれるのだろうか? そもそも社員一人一人を大切にする文化がある会社なのだろうか?という不安・疑問への返答、期待を用意する。
例
- 社風のストーリー
- 内定者フォローの全体的な雰囲気
- 離職率等に関する会社情報公開の具合(内定者だけの特別感的なもの)
- あったかみのある社内のストーリー
しっかりしてソウ
事業・会社がどれだけしっかりしているのだろうか?どんな強み・そして弱みを克服する取り組みをしているのだろうか?という不安・疑問への返答、期待を用意する。
例
- 企業理念のストーリー
- 会社の強みストーリー
- 商品の強みストーリー
- 競合他社との比較における強みストーリー
- 業務内容の厳しさ、仕事の厳しさストーリー
思い描いた社会人になれソウ
先輩社員方はどんな仕事ぶり、生活をされているのだろうか?自分の思い描く社会人生活とどれだけ合致するのだろうか?という不安・期待への返答を用意する。
例
- 先輩社員の仕事の話、学生時代の話、個人的な話、などの情報
- 先輩社員とのリアル・バーチャルでのコミュニケーション
- 人事の人とのリアル・バーチャルでのコミュニケーション
同期たちとうまくいきソウ
同期は気が合いそうだろうか?今後公私共に長く一緒にやっていける人たちだろうか?という不安・期待への返答を用意する。
例
- 学生時代に前向きに取り組んできたこと
- 今取り組んでいることの話
- 選考過程の話
- 個人的な話などの情報
- 同期同士でのリアル
- バーチャルでのコミュニケーション
このような「5つのソウ」を、伝えていく必要があるのです。
そして「ソウ」の伝え方、内容の作成方法で大切なことは2点、「伝える内容は、できるだけ具体的であればあるほど良く、できるだけ話しかけるような表現で行う」ということと「できるだけストーリー的に伝える」の2点です。
例えば「成長ができソウ」に関してですが、これは「成長ができますよ。」とただ表記するだけでは伝わりづらく、大切なのは、具体的な成長ができソウな(気がする)内容(ストーリー)で表現した方が伝わるのです。(この表現方法に関することは導入いただいた際にお渡しする「実践編」を参照下さい)
「5つのソウ」
不安・期待 | 対策 | |
---|---|---|
成長ができソウ | 将来の成長、会社への不安 | 将来の成長、会社への不安VS会社の成長ストーリー、社員の成長ストーリーなど |
大切にしてくれソウ | 自分を大切にしてくれるか、 そういう文化があるのか |
社風のストーリー、内定者フォローの全体的な雰囲気など |
しっかりしてソウ | 事業はしっかりしているのか、 会社の強みは何か |
企業理念のストーリー、商品の強みストーリーなど |
思い描いた社会人になれソウ | 先輩社員の仕事ぶり、 生活はどんな感じか |
先輩社員の話、学生時代の話などのコミュニケーション |
同期たちとうまくいきソウ | 同期とは気が合うか、 一緒に長くやっていけるか |
同期同士のコミュニケーション |
1章と2章をまとめて考えますと、学生の「4つの判断軸」に響くように、「5つのソウ」のどれを御社は伝えているのか?ということになります。特に今年度は「内々定者ゾーン(9月30日)」までの期間に伝えていく「ソウ」を増やしたほうが良い結果がでると思われます。
また10月1日~3月31日までの期間で伝えるべきこと、その期間でしかできないこともあわせて洗い出すことも必要になります。
よって、ここでも巻末付録Ⅱ「What?How?シート」をご用意しております。
4章で学習する「How?」とあわせてご記入頂ければ、御社の内定者フォロー施策の数のバランス、手法のバランスが整理できるシートになっていますのでご活用下さいませ。(4章、How?の終了時にご記入された方がスムーズに記入ができると思います)
次の章では、「5つのソウ」を伝えるべき人はだれか?についてお話したいと思います。
2章のまとめ
内定者が求めるWhatとは、「5つのソウ」
-
A:
成長ができソウ(自己・会社・仕事・同期)
自分が成長できそうか、会社は成長しているのか
-
B:
大切にしてくれソウ(自己・会社・同期)
自分を大切にしてくれるか、そういう文化があるのか
-
C:
しっかりしてソウ(自己・会社・仕事・同期)
事業はしっかりしているのか、会社の強みは何か
-
D:
思い描いた社会人になれソウ(会社・仕事)
先輩社員の仕事ぶり、生活はどんな感じか
-
E:
同期たちとうまくいきソウ(同期)
同期とは気が合うか、一緒に長くやっていけるか

この5つの「ソウ」に対する、答えを学生にしっかり伝えること。
伝われば御社への入社に近づく。
第3章
Who? フォローをするのに絶対必要な「3人の登場人物」
~たった3人、されど3人いないと大成功はできない!~
「内定者フォローを行いたいけれどうちは人手がなくてなかなか難しいんですよね。」
という声をよく人事部の方から聞きますが、これはかなり誤った認識です。
最高の内定者フォローを行うのに必要な登場人物は実はたったの3人で、社員は2名で成り立ちます。
その3名とは、
- 人事(あなた)
- 先輩(あなた以外で「業務・現場」に詳しい社員)
- 協力的な内定者(積極的に情報発信をしてくれる内定者)

この3人がいれば最高の内定者フォローが可能になります。
(ただし例えば、「営業」と「プログラマー」の採用だとすれば「先輩」はそれぞれの職種でいるのがベターです)
この3人の軸以外に「いたらいいな」、というレベルの登場人物として以下の4人がいます。
- 経営層に近い人物(会社のビジョン・価値をアピールする人物)
- 盛り上げられる内定者(内定者の中で情報発信のうまそうな人物)
- 配属先の担当者(実配属される可能性のある部署の人物)
- 面白い先輩社員(コミュニケーションが上手で後輩に人気の人物)
この4人の登場人物は、いればより良いですが、必須ではありません。
「上記の4人のイメージの人をフォロー活動に参加させられないのでうちのフォロー活動は厳しい」
というお話もよく聞くのですがそれも大きな間違いです。
内定者フォローの考え方として
内定者フォローに「スター」は不要

という考え方があります。
上記の「いてくれたらよりベストな人物」はいわゆる「スター」と考えます。
そういう方は当然業務でも忙しいという傾向があり、中々フォロー業務の時間の確保が難しいかと思います。
本来「スター」の方というのは「採用・選考フロー」にて御社の魅力にしびれさせる時、強く印象づける為に必要なのです。
内定者フォローにスターは「必須」ではなく「いればベスト」という存在です。
そもそもここで考えていただきたいのは、内定者フォロー業務とは一体なんなのでしょうか?
核心に迫る話ですが、内定者フォロー業務で最も大切なことは
「日々の、毎週の、入社するまでの間の、会社とのゆるやかな関わりを持つこと」
です。
内定者にとってはイベント的な瞬間的インパクトよりも、計画的に、長期の視野をもって、ゆっくりとじっくりと様々な理解を感じとれる事が最も効果的なのです。
それを作りあげる為に、最高の内定者フォローを行う為にはたった3人でできるということなのですが、ここで一番問題になるのは(いないケースを多く見かけるのが)
「協力的な内定者」
の存在です。
この登場人物を登場させられず中途半端に終っているケースをよく見かけますが、この「協力的な内定者」は最も大切な登場人物になってきますので必ず登場させて下さい。(実践編に協力的な内定者の登場のさせ方のコラムがございますのでそちらをご参照下さい)
さて、3人の方の仕事としては、下記A~Eの役割を、スタート時は分担して行って頂くことになります。
A | 全体管理者としてログイン状況を常に把握する人 |
B | 会社・内定者の必要事項、イベントを連絡通知する人 |
C | 何でも相談できる人事の人 |
D | 仕事・会社の事を教えてくれる先輩社員 |
E | 積極的にサイトを活用する内定者 |
他の人事社員・先輩社員・内定者はこのリアル・WEBコミュニティーのやりとりを見て、真似をします。
良い土台が出来上がりますと質・数ともに優れたコミュニケーションが発生しますので、まずは「3人で良質な土台をつくる」ことが大切になります。
3章のまとめ
-
1.
「5つのソウ」を伝えるのは3人でよい
絶対必要な3人
- 人事(あなた)
- 先輩(あなた以外で「業務・現場」に詳しい社員)
- 協力的な内定者(積極的に情報発信をしてくれる内定者)
-
2.
内定者フォローに「スターは不要」
-
3.
上記3名で行う役割は5つ
- 全体管理者としてログイン状況を常に把握する人
- 会社・内定者の必要事項、イベントを連絡通知する人
- 何でも相談できる人事の人
- 仕事・会社の事を教えてくれる先輩社員
- 積極的にサイトを活用する内定者

この5つの役割を3人で分担し、「日々の、毎週の、入社するまでの間の、会社とのゆるやかな関わりを持つこと」が重要
第4章
How? 内定者フォローを行う為の「8つの手法」
~どのような方法・手法で伝えていくのかベストなのか?~
どうやって・どんな方法で、伝えるか? その手法・手段についてのHow?の章です。
大きく分けますと手法・手段とは下記の8つになります。
その1 | 内定者と1:1で会う(状況ヒアリング・個別MTなど) |
その2 | 内定者複数:人事(複数)で会う(懇親会、研修など) |
その3 | 人事の人間以外と会う(職場見学会、同行など) |
その4 | 内定者同士だけで会う(非公式な同期会など) |
その5 | メールで個別又は一斉に伝える |
その6 | SNSなどのコミュニティー・日記を活用する |
その7 | 動画、映像配信サービスを利用する |
その8 | 手紙・郵送物・FAXを送る、送らせる |
この8つの手法をまとめますと、2種類になります。
リアルによるフォロー(その1・2・3・4・8)
ITツールによるフォロー(その5・6・7)
(リアル・ITツールで気をつけるべき具体的な表現方法は実践編にてご説明させて頂きます。何をリアルで伝えた方がいいのか?どれをITツールで伝えた方がいいのか?それは内定者の数によっても変わってきます。しかし3人の登場人物だけでフォロー業務をまわすのであれば結果的にITツールの比重が高くなると思います。)
「リアルとITツールどちらを使ってフォローしていけばいいですか?」という質問もよく受けますが、大前提は、
リアルとITツールの相乗効果
です。
特に、現在の学生に対しては少し前の学生に比べてリアルとITツールの相乗効果が大きく期待できます。
というのは、昨今の学生はネットジェネレーション世代(NETGEN)と言われています。
この世代を簡単に特徴付けると、当たり前にインターネットがあり、携帯電話があり、メール、検索やwiki、SNSやブログ、RSSが身近にあった世代です。こういった特徴を持っている世代だからこそ、ITツールはフォローに馴染みやすく、有効です。
フォローの頻度の話をさせて頂きます。
もし可能であれば、ITツールによるコミュニケーション以外に毎月1時間でも内定者との定期的な個別MT、さらには社内の様々な立場の人も交えた懇親会を開催していきたいものです。
では、実際にどれくらいの頻度で内定者と会っているのでしょうか?
多くの企業の現状を調査したところ、現実的には5月の内定出し~4月1日入社までの期間でリアルに会ってフォローをしたのは、
- 内定承諾書を提出、その他書類の提出に5末もしくは6月に1回(手法その1)。
- 7月くらいに内定者懇親会1回(手法その2)。
- 10月1日の内定式1回(入社直前研修1回)(手法その2)。
内々定以降、入社直前研修までリアルにあったのは実は3回、しかもちゃんと本人と話をしたのは承諾書提出時のみ(あとは内定者同士が有志で懇親会を実施)という企業が最も多数派になっています。
ちなみに、上記のような企業はITツールでどのようなフォローをしているかと言いますと、
- 上記イベントの案内メールで数回のみ
(案内と出欠確認でのコンタクトのみ)(手法その5) - 事務的な書類のお届け連絡のみ(手法その8)
とあまりフォロー活動的には活用できておらず、連絡手法としてのITツール活用にとどまっているケースが最も多くなっております。
このように、ここまで書いてきたような- リアルでもあまり会えず
- ITツールでは連絡のみ
これでは大したフォロー効果は期待できません。
1章・2章で申し上げた、「4つの判断軸」に、「5つのソウ」を叩きこむ、浸透させるのが内定者フォローの仕事です。
頻度は高いに越したことはありません。リアルで会う時間・場所を確保できないのなら、ITツールを駆使してとにかくやる。
もっとも大切なことはこの「やる。」ということです。
接触機会、コンタクト数が多ければ多いほど入社意欲は基本的には上がります。
それは意識しなければ「5つのソウ」に偏りが出ますが、偏りが出たとしても無いよりはプラスに作用するのです。
あとは伝えるべき内容によってリアル・ITを組み合わせて伝えていくのが大切です。
例をあげますとこのような感じのフォローです。
先輩社員を交えたリアルの懇親会を開催することによって
- 社風
- 先輩社員と気が合いそう感
- 同期とのつながり
を感じさせる、そして家に帰ってから改めてITツールで、その日あまり関われなかった人とも関われる場を提供し、
- 安心感・信頼感
を浸透させ、さらに熟成させていく。
このようにリアル・ITを組み合わせてフォロー活動を行う、とにかくコンタクト数を増やす努力をしていくことが内定者フォローにおいて最も重要です。
ということで、ここで巻末付録Ⅱ「What?How?シート」の作成に入ってください。
2章「5つのソウ」のどれに御社の今考えているフォロー施策はあてはまるのか?
及びそれはリアル・ITそれとも両方をあわせて実施していくのか?
また時期(次章で詳細は説明します)もイメージをしながら一通り記入してみて下さい。
ここで完成させたシートが最後「内定者フォローマトリックス」を作成する時に役に立ちます。
4章のまとめ
内定者フォローには「8つの手法」がある
- 内定者と1:1で会う
- 内定者複数:人事(複数)で会う
- 人事部の人間以外と会う
- 内定者同士だけで会う
- メールで個別又は一斉に伝える
- SNSなどのコミュニティー・日記を活用する
- 動画、映像配信サービスを利用する
- 手紙・郵送物・FAXを送る、送らせる

上記の手法を用いて、ITでもリアルであっても、
「4つの判断軸」に、「5つのソウ」を叩きこむ、浸透させることが
内定者フォローと心得る
第5章
When? 内定者フォローにおける「4つのゾーン」
~4つの時期それぞれのゾーンで何を行っていくのか?~
内定者フォローにおける時期、という事をご説明致します。
時期はこの4つに分解されます(図表1参照)。

内々定直後ゾーン(おもに4月~6月)
ずばり、学生が入社し本気で働くことを考えて決断をする時期です。
ただし、先ほども申し上げましたが優秀な学生であればあるほど「2社」に絞る、とお考えください。
選択肢が特になければこのゾーンで1社に決定をします。
非常に悩む時期であり、この期間にどれだけの情報(What)に触れさせることができるかが重要なタイミングです。
ちなみに学生は入社を迷っていればいるほどリアルのコンタクト(人事の人間との接触)を嫌がる傾向がある為、ITツールをうまく活用して「5つのソウ」を伝える必要があります。
内々定者ゾーン(6月~9月30日)
承諾をした、一応入社しようと思ってから正式な内定日の10月1日までの保留期間です。
学生は自分のした決断の揺り戻しが来て本当に正しかったのだろうか?と悩む期間にもなりますのでフォローが極めて重要になります。
また逆に「自分の決断は正しかったのだ」と強く思う材料を探している期間でもあるので取り組むフォロー次第で大きく気持ちを強めることができます。
とにかくこの時期一番してはいけないのが「放置」です。
内定安定ゾーン
10月内定式も終了し、入社する実感も伴って最も「辞退」が発生しづらい時期といえます。
但し危険要因がゼロではなく教員・地方公務員試験の合格発表が大体10月にありますのでそこには注意が必要です。
とはいえ比較的安定しているこのゾーンでは、4月1日の入社に向けた「何らかの学習」に取り組ませましょう。
「学習・教育」をこの時期に行うことで、より入社に向けての具体的イメージをもちやすくなります。
逆にこの時期に何も手を打てないと4月1日に学生気分が抜けない、ということになる危険性があります。
入社直前ゾーン
意外に危険なゾーンです。
この時期の危険は「卒業研究、論文の危険」「単位習得できない危険」がまず前半(2月15日まで)に襲って来ます。
早めに状況を把握できるようにする為に「卒業相談室」的なコミュニティーを用意して単位不足等に対する対策を打てる準備をしている企業もあります。
また後半(2月以降)も社会人になるという緊張感から不安定になる学生も出てくる危険性があります。
以上、この4つのゾーンの説明をしてきましたが、ここから分かってくることはこの4つのゾーンでそれぞれ取り組むべき課題が違っている、ということです。具体的には

この代表的な4つの危険に対して、この4つのゾーンでどのような手をうっていくか、そしてそれぞれにどのようなゴールのイメージをもつか、次章最終章でまとめていきましょう。
5章のまとめ
内定者フォローには「4つのゾーン」それぞれに危険が潜んでいる
-
1.
内々定直後ゾーン
(おもに4月~6月 )
内々定がバッティングし、非常に迷う時期
-
2.
内々定者ゾーン
(6月~9月30日)
本当に正しかったのだろうかと悩む時期
-
3.
内定安定ゾーン
(10月1日~12月15日)
内定式後で、最も安定している時期
-
4.
入社直前ゾーン
(12月15日~3月31日)
卒業できない等の危機が潜んでいる時期

4つのゾーンでの打ち手を考えることが重要!
第6章
内定者フォローの手順について
~設計図「内定者フォローマトリックス」をまとめましょう~
以上ここまで5章にわたって内定者フォローというものを分解して説明してきましたが、この章はまとめの章になります。ここまでを振り返りますと、

この5つのポイントを押さえて内定者フォローを行う、ということをお伝えしてきました。
そして最後に、内定者をフォローする手順、流れについて説明します。
「4つの判断軸」をイメージしながらすすめていくのですが、
その手順とは、
-
1.
まずは内々定を告げる
(ここからフォローが始まります)
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2.
内定者が大切にしている考え方、価値観を再度明らかにさせる
(個別面談などを通して内定者一人一人が4つの軸を明らかにさせていくのを手伝うイメージで取り組みます)
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3.
会社、仕事の理解をより深くさせていく、できるようにする
(リアルの懇親会等に先輩社員も呼んで交流~理解をさせるイメージ+ITツールによるフォローの本格スタートです)
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4.
自分と会社・仕事が結びつくイメージをもてるようにする
(リアル・ITツールを通したグループワークや、「それを発表していくコーナー(ITツール)」の設置により、深く会社・仕事に対して理解を浸透させていけるものを用意していく)
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5.
同期との交流で、更に結びつきを深める
(同期との語らいによって、仕事・会社の理解もより深くなります。当然、同期同士のきずな、つながりも深くなっていきます)
このようなプロセスを踏むように御社の内定者フォロープログラムを設計して下さい。
あとは出来ることなら、ここに登場できる人物をふやしたり、それぞれを深める仕掛けを行ったりしていく。(例えば職場見学会は、4に当たり、そのナビゲートのサポートを内定者の数名にやらせることで、5の効果も同時に発生させることができます)
そうすることでプログラム一つ一つが4つの軸に響く効果を広く、そして深くすることができるのです。
この手順をイメージしながら、御社が考える内定者フォロープログラムを巻末付録Ⅲ「内定者フォローマトリックス」に沿って、学生の「4つの軸」に対して「5つのソウ」を「いつ、どうやって、どの時期に実施するのか」を落としこんでみて下さい。
この表に具体的に埋めることができればできるほどベターです。
また月毎、「5つのソウ」毎、リアル・IT毎に合計点数が記入できる欄がございます。
点数の記入イメージですが、◎はメイン施策、◯は補助施策、×は施策なし、で点数を入れて下さい。
どの程度のバランスで実施するのがBESTかの参考例として達人システム株式会社の例を実践編に添付しておりますのでご参照下さい。
最後に御社の施策を下記の項目でチェックしてみて下さい。
施策(5つのソウ)に偏りがないか?
その施策は内定者が求めている「4つの軸」の要望を満たしているか?
施策のスケジュールに無理はないか?
時期(ゾーン)の偏りは大丈夫か?
リアル・ITのバランスに極端な偏りがないか?
この5点に気をつけてチェックをし、必要であれば計画の追加・修正を入れ、BESTな内定者フォロー設計図を完成させて下さい。
内定者フォローの達人 ノウハウ編 おわりに
御社でも何気なく今までやってこられている「内定者をフォローしていく」という業務を、今年度さらに良いフォローアイデアを考えつくきっかけになればと思い「ノウハウ編」としてまとめさせて頂きました。
この本に出てくるほとんどのノウハウは取り立てて新しいものではないとは思います。
ただ、このような形で属人的ではなく、誰でも内定者フォローができるようにまとまったものは存在していないと思いますので、きっと御社のフォロー業務のブラッシュアップのお役に立てるのではないかと思っております。
しかしここまでのノウハウはあくまで「理論」であります。
弊社としては別紙の「実践編」にこそ実はフォローの本物のノウハウがあると考えております。
「実践編」はITフォローツールの代表作、「内定者パック」を使って具体的にどうフォローをしていけば良いか?を「生きた事例」として紹介していく内容となっております。
具体的に登場するノウハウの一例を紹介しますと
- どんな写真を公開するといいのだろうか?
- どのように業務を紹介すればいいのだろうか?
- 日記を活性化させるにはどうしたら良いのだろうか?
- 負担を極力抑えた「内定者の学習・研修」はどうしたらいいか?
このような疑問にお答えすべく「生きた事例」を紹介していきます。
またリアルフォローにITツールをどう絡めていくと相乗効果があがるのか?その問題解決にも高いノウハウが詰まったものとなっております。
引き続き「実践編」もご一読の上、御社のフォロー活動の成功にご活用下さいませ。